なぜ正しい国選びが海外就職の成功に直結するのか
海外就職・海外移住を考えているあなたは、具体的に住みたい、働きたい国がありますか?文化に興味がある国、旅行や留学に行って惹かれてしまった国、ずっと住んでみたかった国、・・・でも国を決めるときにはただ自分が興味があることだけでなく、多くの要素を考慮することをおすすめしす。なぜなら、移住先の国選びは海外転職と移住生活の成功に大きく影響するからです。
せっかく海外で仕事を得て働き始めても、文化や生活習慣になじめないなど、さまざまな理由でその国の滞在をあきらめる人たくさんいます。また大好きな国に住んでいていてもっと滞在したいのに、仕事が見つからない、十分な収入が得られない、ビザが延長できないなどの理由で帰国せざるを得ない人も多く見てきました。
海外転職は仕事も生活環境も同時にガラリと変わる、人生の大きなイベントです。環境の変化によるストレスやリスクがあることを最初から頭に入れて、実際に住むとどんな状況になるのか想像力を働かせてみてください。
もしあなたが短期間で移住体験・就労体験をしたいというのでしたら、興味がある国や縁があった国に住んで相性を確かめてみるのもいいかもしれません。でも現地で就職して継続的に十分な収入を得、楽しく生活していくためには、就労環境と生活環境の両方の視点で国選びをする必要があります。
私自身、移住前に多くの国を旅行して移住する国を検討し、アメリカ、カナダ、オーストラリアに候補を絞りました。そして実際にオーストラリア移住後も、現地での就職と生活を成功させてきました。そんな生の移住経験をもとに、どんなことに注意して国を選べば海外就職と海外移住の成功につながるのかを、10の重要ポイントに絞ってお伝えします。
- その国に自分の仕事があるのか?
- 就労ビザの可能性で移住する国が決まる!?
- 労働環境を変えたいならチェックするべきこと
- 語学力で国が決まる?
- 海外生活の原資である給料は見過ごせない
- 生活環境は海外生活の質を決める
- 自然環境が自分に合っている国を選びたい
- 長期滞在には必須の医療・教育・社会福祉制度
- 異文化環境を楽しめるか
- どんな人たちが住んでいるのか?
1. その国に自分の仕事があるのか?
移住先で働いて収入を得るなら、あなたができる仕事がその国や地域にあることがもっとも重要です。移住先の国で自分の職種の需要があるかどうか調べてみてください。
もしその国で働きたくても自分のスキルや経験にマッチする仕事が少ない場合は、スキルアップや職種変えをする必要があるかもしれません。これはあなたのキャリアプランに直結するので、将来を見据えて最高の決断をしたいですね。
日本の就職市場は、多くの海外の就職市場とは違います。同じ職種でも仕事の中身や採用の条件が違う場合があり、注意が必要です。また同じ業界でも国によって状況が違う場合もあります。日系企業を目指す人は、 希望の移住先に日系企業が多くあること も条件になります。
私は希望の国に自分の仕事の需要があったことが国選びの決め手になりました。移住前からその国の同じ職種の人に話をきいたり、カジュアル面接をして需要を探ったりしていました。
海外で働くなら、自分の希望の分野の就職市場をリサーチすることが第一歩になります。
2. 就労ビザの可能性で移住する国が決まる!?
海外就職を考える場合、ビザは一番重要といってもいいすぎではありません。国によって就労ビザの種類や条件は大きく違います。就労ビザが取れるかどうかによって働ける国が決まってしまう場合が多いのも事実です。
どの国にどんな就労ビザがあって、自分が使う可能性があるビザはどんなものがあるかを早めおさえておいてください。 ビザによって滞在できる期間や条件が違うので、自分の能力や目的に合うビザを取得する必要があります。
雇用主にビザのスポンサーになってもらう場合は、転職したり解雇されるなどしてスポンサーとの関係がなくなったときは、新しいビザスポンサーが見つからないとその国に滞在することはできないので、そのことも頭に入れておいてください。ビザが延長できずに出国せざるを得ないのは、どこの国でも移住者の宿命です。
スポンサーに頼るビザは不安定なので、自分の思い通りに滞在することが制限されてしまいます。長期的に移住先の国で働きたいのであれば、早めに永住権を取ること前提に、国とビザを選ぶことをおすすめします。
3. 労働環境を変えたいならチェックするべきこと
今の労働環境を変えたい、残業を減らしたい、ライフワークバランスが取れることを理由に海外移住を目指す人も多いです。
私の海外就職の理由の一つは、長時間労働から解放されたかったからでした。実際オーストラリアに移住して、残業時間がほぼゼロになり、数週間の長期休暇、疾病休暇など、労働環境は驚くほど良くなりました。労働時間や働く場所などが個人の裁量に任される部分が多いのもうれしい点です。労働契約もフルタイム、パートタイム、正社員、契約社員、年俸制、日給制、時給制などいろいろな形態があるので、個人の事情に合わせて働き方を柔軟に選ぶことができます。
対象の仕事の労働時間、休暇日数、働く場所(オフィス、自宅、ハイブリッド)、契約形態などの状況がわかっていると、実際に働くときのイメージができて安心です。労働環境は国だけでなく、業界、職種、雇用形態によっても違うので、自分の職業や業界の事例を調べておきましょう。
4. 語学力で国が決まる?
海外就職といえば語学力は切っても切れません。自分が話せる言語や学びたい言語は、どの国のどの職場で使われているでしょうか?
現地語の使用が必須の職種の場合は、 言語能力によって働ける国が決まってしまう場合もあります。顧客と対面する仕事や管理職の場合は現地語ができることが条件になりますが、そうでない場合は流ちょうでなくてもなんとかなってしまう場合もあります。
たとえばIT職は、職種によっては技術力の方が重視されるので、あまり流ちょうにしゃべれなくてもなんとかなってしまう場合もあります。私は語学に自信がなかったので、移住当初は対人の仕事が少なめの仕事を選びました。
現地語を使って仕事をする自信がない場合は、日系企業などで日本語を使った仕事をすることになりますが、仕事の数は現地企業に比べて非常に少ないので、職種選択の上では制約はでてきます。
自分がある程度教育を受けてきたことと、子供の教育のためにも、共通語である英語圏で働きたい人は多いです。でもドイツやオランダなど、第一言語が英語でなくても多くの職場で英語も使われている国もあります。
就労ビザを取るときにも語学力が影響するので、ビザの条件を調べるときは自分の語学力にマッチするかどうかも調べておいてください。
どんな会社や職業を選ぶにしても、海外で働く場合には現地語が話せるほうがより高いポジションや高収入を得ることができ、生活面でもメリットが大きいので、早めに現地語の取得を始めてください。
5. 海外生活の原資である給料は見過ごせない
国際的に見て日本の給与が相対的にどんどん下がっている今、収入増を目指して海外移住を考える日本人が増えています。同じ能力で同じ時間働くなら、やはり給料が多い方が魅力的ですよね。
せっかく海外移住しても、生活を支える収入が継続的に入ってこない場合、移住先で長期的に生活するのは困難です。これは海外移住者が祖国に帰る大きな理由になり得るので、収入計画は入念にしておいてください。
移住する国の給与水準がわかっていると国を選ぶ時の参考になります。ただし職種、スキル、経験、業界によって給与水準が違うので、平均給与などのデータではあまり当てになりません。自分の職種でどれくらいもらえるのかを事前にしっかり調査しておくと現地生活の見通しが立てやすくなるし、給与交渉のときにも役にたちます。
多くの国ではここ数年インフレで生活費が高騰しているのに加え、日本円の価値が下がっているので、日本から旅行したときに物価が高いと感じることがあるかもしれません。でもそれを補うだけの収入を現地で得ていればやっていけます。
現地での物価や生活費がわかっていると、どれくらい稼げば理想の生活水準が保てるのか想像がつきます。自分が稼げる収入と支出との兼ね合いを見ながら、持続性のある生活設計をしてください。
6. 生活環境は海外生活の質を決める
環境がガラリと変わる海外生活、いくら仕事が順調でも、その国の生活を楽しめなかったら残念ですよね。実際に住んでみて肌に合わないことがわかり、どうしてもなじめなくて短期間で帰国してしまう人もいるので、国は慎重に選びたいものです。家族連れの人は家族全員が楽しく暮らせる環境を選ぶ必要があります。
日本のような比較的安全な国に住んでいる私たちにとっては、治安がいい国かどうかは重要な要素です。同じ国でも住む場所によって安全性が違うことが多いので、安全な地域をよく調べてから住む場所を決めてください。実際に下見に行って肌で感じてみることが大切です。
食事も大切な要素ですね。どうしても日本食がないとダメ、アジア食が恋しくなる、辛い物が苦手など、いろいろな嗜好があると思います。外食だけでなく、好みの料理の食材が手に入るかどうかもポイントです。
私が下見に行ったときは、観光地ではなく住宅街のスーパーやマーケットに行き、現地人の生活を観察しました。また自分で食材を買って自炊もしてみたので、現地生活をプチ体験することができました。
家賃や家の価格もチェックしておくといいですね。
7. 自然環境が自分に合っている国を選びたい
あなたは好きな気候、苦手な気候はありますか?人によっては寒いのが苦手な人もいるので、そうすると必然的に暖かい国が候補になりますね。体で感じることは自分ではなかなかコントロールできないので、体に合わない土地に住むのは大変です。
私は湿気が多い気候が苦手だったので、湿気が少ないことが国選びの条件の一つでした。
一番いいのはその国に旅行してみることですが、季節によって気候がぜんぜん違うことがあります。できれば旅行者にとってのハイシーズンだけでなく、オフシーズンの状況も確かめておくと、国を決めるときや現地生活の準備をするときに役にたちます。
同じ国でも地域によって気候がまったく違う場合もあります。たとえば私が住むオーストラリアは国土が広いので、北部と南部、沿岸沿いと内陸では気候がぜんぜん違います。
自然環境も生活の質に影響します。私は長い間日本で大都会の環境にいたので、海や山などの自然に恵まれている所に住みたいと思っていました。それで自然が豊かなカナダとオーストラリアが候補になりました。今は毎週近くのビーチで散歩やピクニックをしたり、野山でハイキングやキャンプをしたりして大自然を楽しんでいます。
8. 長期滞在には必須の医療・教育・社会福祉制度
医療制度は、長く住み続けることを考えた場合に大切な要素になります。国民保険制度、税金でまかなわれる医療の範囲、国の医療技術のレベルなどは押さえておきたいですね。ビザによって国民健康保険が使えるかどうかや医療費が変わる場合があるので注意が必要です。
子供がいる場合は教育制度もカギになります。公立・私立の学校制度、教育費、政府からの補助金などを調べましょう。国によっては子供の教育費がタダになったり、政府からの補助が出る場合があります。ビザの種類によっても受けることのできる補助が違う場合があるので注意が必要です。
また大人になってからも学校に戻ってスキルを積むことが一般的な場合も多いので、社会人向けの教育制度の充実度は気にしておきたいところです。
社会福祉が充実している国に住む人ほど幸福度が高いのはよく統計でも発表されています。お子さんがいる場合は、保育環境や児童福祉制度の充実度は重要ポイントです。
そして引退後の生活も考えるなら、年金制度の充実度もポイントになります。
9. 異文化環境を楽しめるか
海外移住の醍醐味の一つは、日本では経験できない異文化と接することができることです。海外に住むと、否が応でも現地の文化と共存することになります。あなたはどんな文化に興味がありますか?欧米圏の文化が好きな人、自分と同じアジア圏の方が安心できる人などいろいろですね。
最近は多くの国でグローバル化が進み、外国からの移住者と仕事や生活を共にする機会が増えています。オーストラリアも白人の国だったのは昔の話で、今は労働人口の三分の一が海外生まれ。世界中から来た移民が住んでおり、人種のるつぼになっています。
私の友人も職場の同僚も、実にさまざまな人種です。違うバックグラウンドの人とつきあうときは、日本人どうしのように阿吽の呼吸が通じなくて苦労することもありますが、視野を世界に広げることができるすばらしい体験です。
どんな文化なら生活になじむことができるのか、たくさん旅行をしたり海外の友人を作ったりして考えてみてください。
海外からの移民が多く、異文化や異人種が日常生活に溶け込んでいる国に住むと、外国人としてひけめを感じることが少なく、外国生活がしやすくなります。
10. どんな人たちが住んでいるのか?
気候や生活環境も大切ですが、やはり付き合う人によって生活の質は大きく変わります。移住先でも気の合う友達を作って生活を楽しみたいですよね。
国民気質は、あけっぴろげでフレンドリー、用心深い、きっちりしている、おおざっぱなど、土地によってさまざまです。自分が好きなタイプの人が多い国に住むと毎日が楽しく過ごせます。
私が住むオーストラリアは、細かいことを気にせず前向きに考える人が多いので、この環境が私にも大きく影響し、日本に住んでいた時よりもあまり深く考えたり他人を気にしたりせず、自分のやりたいことに取り組めるようになりました。
日本人移住者が多いことも移住者としての住みやすさの基準になります。どんなに好きな国でも、海外で生活するのはいろいろと気苦労が多いものです。そんなとき、同じバックグラウンドを持っていて悩みを共有でき、いざというときに助け合える日本人の友人がいると、海外生活をするうえで安心です。
どうして海外で働きたいのか、原点に帰ってみよう
これまでみてきたように、海外転職の国選びの決め手になることはたくさんあります。その土地になじんで楽しく生活し、持続可能な海外生活を考えるのであれば、なぜ海外で働きたいのか、移住先でどんな生活を送りたいのかを自己分析してみてください。
移住先を決める前には、ネットで情報を調べたり人の話を聞くことも多いと思いますが、興味がある国があったらその国に旅行して自分の目で確かめてみることを強くおすすめします。他人が感じることは自分の視点と違う場合があるからです。
そして観光客としてではなく、生活者としての自分を想像してみてください。なんとなく感じた空気感が意外と重要だったりするので、理屈だけでなく、第六感もときには重要です。
私も移住候補の国には何度も足を運び、自分が現地で生活しているシーンを想像して違和感がなかったので決めました。
すべて自分の望み通りになる国を選ぶのは不可能なので、どうしても譲れない条件と、自分の希望には合わなくてもなんとかやっていけそうな条件を明確にしておくと、国選びがしやすくなります。