日本からプロフェッショナルとして海外で転職しているケースを見ていると、ITエンジニアがとても多いですよね。私は海外で就職しようと思って職種を選んだわけではなく、たまたま日本でソフトウェアエンジニアだったんですが、海外で仕事をしようと決めたとき、また移住していろいろな会社で働いてみて、技術職で本当によかったと思います。他の職種に比べると圧倒的に有利なのです。
IT 専門職が不足している
海外で働くということは、外国人としてその国の就職市場に入れさせてもらうということです。 国としてはできるだけ自国の国民に仕事についてもらいたいので、わざわざ外国人を入れるということは、自国でその人材を賄えないからです。 ということは、その国で必要とされているスキルを提供すれば重宝されるのです。
高度な専門知識を持つ ITプロフェッショナルは世界的に不足しています。 ITの世界は技術革新が目覚ましく、 常に勉強して新しい知識を身につけていないと追いつけません。教育にも時間がかかるため、優秀な技術者を見つけるのはどこの会社も苦労しているのです。
このグラフは、世界のITリーダーが回答した、分野別IT人材不足の状況です。
幸い私の専門は big data / analytics に該当し、比較的職が得やすい分野です。AIやセキュリティも慢性的に人材不足の分野です。私が働くオーストラリアでも、ITエンジニアが圧倒的に不足していて、IT業界は海外からの移住者がいないと成り立ちません。世界で必要とされているスキルをもっていれば、就職がしやすくなるのです。
就労ビザを取りやすい
海外で働くには、就労ビザを取ることが必須です。移住先国で技術者が不足していれば海外から連れてくるしかないので、当然就労ビザは取りやすくなります。多くの国では、自国の人材不足を補ってくれる海外の専門職向けに就労ビザを発行しています。オーストラリアも就労経験のある特定の専門職向けの就労ビザがあります。私の場合は技術独立ビザという永住ビザを申請し、Australian Computer Society という機関の書類審査を受け、永住権を取ってから渡豪しました。
専門職の中でもIT職のいいところは、技術や資格が世界共通ということ。自国でいくら経験を積んでも、他の国に移ってそのまま働くのは困難な職種もあります。例えば会計士なら国別の会計基準があるし、医師、建築士、教師なども国別の資格があります。 ITの場合は、ポンと海外に移ってもそのまま働けるメリットがあるし、グローバルで通用する資格もたくさんあります。
英語のハンデが少ない
日本人にとって海外で働くときの一番のネックはやっぱり言葉ですよね。私も長年日本で暮らしていたので、英語のハードルは相当高かったです。外資系企業で海外と英語を使って仕事をしていたとはいえ、日本人がしゃべる英語なんてネイティブスピーカーからはかなり大目に見てもらえました。日本人が英語ができないのはみんな知っているし、海外出張しても、しょせん日本から来たお客さんですからね。
でも移住先でローカル企業に採用されるときはそうはいきません。まず難関は英語の面接、それをクリアしたとしても職場での英会話、会議、ドキュメントの読み書き・・・。私は日本では英語はできるほうでしたが、現地で働いて初めて、私の英語はお子ちゃまレベルだったとわかりました。
でもITの場合、専門技能さえあればヘタな英語をカバーしてくれるのです。ITエンジニアはドキュメントを読んだり書いたりする機会は多いですが、一部の職種をのぞき、一般的に流ちょうなしゃべりはそれほど期待されていません。スピーキングが苦手な日本人にとってはなんともうれしいじゃないですか!
実は技術職もコミュニケーション能力は必須です。顧客に要件をきいたり、会議でディスカッションに参加したり、ドキュメントの読み書きができないと仕事になりません。ジョブディスクリプションにも、高度なコミュニケーション能力が必要と書かれているのをよく見ます。職種にもよりますが、顧客に近い位置にいるポジションだと話す能力がより重視されます。
私は日本では技術営業職で、顧客向けにプレゼンをすることが多かったので、移住当初はしゃべりが重要でない職種で仕事を得て、慣れてきてからより高いコミュニケーション能力が求められる職種に移りました。
グローバル環境で働くことに慣れている業界
先にも書いたように、IT技術は世界共通なので、英語さえ使えればどこでも仕事ができるので、国際間の人材流動性が高い業界です。英語をコミュニケーション手段として、世界中のエンジニアと一緒に仕事をすることが可能です。エージェントから仕事の誘いが来るときも、自分の住んでいる国の仕事とは限りません。多くのエンジニアは国境を越えて転職します。また国際プロジェクトで世界の国に住む人たちと一緒に仕事をすることも珍しくありません。
私も日本でも海外でも、国際的なプロジェクトを何度か経験しました。海外のエンジニアが日本に一定の期間日本に滞在したり、私が他国に出張したり、自国にいながら複数の国のプロジェクトメンバーたちとリモートで働くなど、いろいろな国の人と一緒に仕事をしてきました。IT業界では、必要なスキルを持つ人材を世界中から探してくることは当たり前になっています。
移民が多いオーストラリアのIT業界は人種のるつぼ。私も、インド、スリランカ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、中国、香港、台湾、シンガポール、ニュージーランド、ロシア、ウクライナ、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ、ベネズエラ、エジプト、ナイジェリア・・もう多すぎていちいち覚えていませんが、いつも世界中の人種が職場にいます。残念ながらオーストラリアで日本人と仕事をしたことはありませんが。
様々な国の人たちと仕事をすることが普通の業界なので、外国人に慣れている人が多いです。また日本のIT業界は男性天国ですが、海外には女性のITエンジニアもたくさんいます。外人とか女性とかを特に意識せずにのびのびと働くことができます。
ITエンジニアとして海外を目指そう
ITエンジニアとかソフトウェアエンジニアというと、プログラマーですか?とよくきかれます。世間にはITに対して偏ったイメージを持つ人も多いようです。ITのことをよく知らない人は、一日中コンピュータモニターに向かってカシャカシャとコードを書いていたりというイメージがあるかもしれません。私はプログラマーではないし、どちらかというとプログラミングは苦手です。
IT系の仕事はプログラマーの他にも実に様々な職種があります。高度専門職なので、職種が非常に細かく分かれていますが、ざっくりとこんなところでしょうか。
- システムアナリスト
- アプリケーションアナリスト
- デベロッパー
- ビジネスアナリスト
- Webエンジニア
- ネットワークエンジニア
- セキュリティスペシャリスト
- データベース管理者
- インフラアーキテクト
- サポートエンジニア
- テストアナリスト
- データアナリスト
- データサイエンティスト
- プロジェクトマネージャー
- プロダクトマネージャー
- プリセールス
このハイレベルの分類の下に非常に細かい分類があります。中にはバリバリの技術系の職種もあれば、高いコミュニケーション能力が必要な職種もあります。
私はもともと文系で、IT職を選んだのは働く場所に関係なく手に職をつけたかったからですが、結果的にこの職種のおかげで海外転職を成功させることができました。ITの世界は、技術さえあればどこでも生きていけます。
あなたがもしITエンジニアなら海外転職はしやすいので、ぜひ海外をめざしてほしいです。日本の経験を海外で活かすことができれば最高です。また今IT業界にいないあなたも、ITを勉強してぜひIT職を目指してみてください。文系のあなただってITエンジニアになれます。身に着けた技術は大きな財産になり、将来の選択肢が広がります。