あなたは転職でエージェントを使ったことがありますか?いい経験も悪い経験もいろいろあるのではないでしょうか。エージェントは、求職者が一人で活動していては決して得ることのできない、大きな役割を果たしてくれますが、必ずしもメリットばかりとは限りません。
私は日本と海外で多くの転職をし、数えきれないほどの数のエージェントとおつきあいしてきました。そんな経験から、転職で最高の効果を上げるためには、エージェントとの上手なつき合い方を身をもって学びました。これを知っているのといないのでは、転職活動の成果が大きく変わってきますので、ご紹介します。
転職エージェントのビジネスとは?
転職エージェントの種類
転職エージェントはさまざまな形態がありますが、 一般的なのは、登録型とヘッドハンティングです。登録型は仕事を探している人があらかじめ自分のスキルや志望職種を登録しておくと、希望にあった案件が出た時に知らせてくれます。
一方ヘッドハンティングは、エージェントがクライアント企業が探している人材の要件にもとづいて、積極的にマッチする人を探し出すサービスです。この場合、エージェントは特に仕事を探していない人にも積極的にコンタクトを取ります。
外資系のIT 業界にいると、普段から職場にエージェントから電話がかかってくることがよくあります。私は日本とオーストラリアでの10回以上の転職で、登録型とヘッドハンティングの両方を経験してきました 。
転職エージェントのビジネスのしくみ
エージェントは、転職活動の最初から最後まで、求職者に必要なことを全部面倒見てくれます 。仕事の紹介、応募 、面接のセッティングからレファレンス、ジョブオファー、給与交渉に至るまで、エージェントがかかわらないことはほぼありません。
外資系の採用プロセスについてはこちらを参考にしてください。
そして求職者にとっては費用は一切かかりません。なぜかというと、エージェントはお世話した求職者が就職すると、求人企業から仲介料をもらうからです。だからどんなに時間をかけてあなたと企業の間に入って一生懸命働いても、他の応募者がジョブオファーを獲得したり、あなたがオファーを蹴って他社へ入社してしまったら、報酬は入りません。つまりただ働きなのです。
エージェントにとって転職者とは
エージェントのお客さまはあなたでなく会社です。そして仕事を探しているあなたは、いってみればエージェントがお客さまに提供する商品なんですね。だから自分が商品とどんな価値があるのかを自覚していること、これがエージェントと付き合ううえでの秘訣です。
エージェントを使うメリット
非公開の求人を紹介してくれる
求人はすべて公開されるとは限りません。急に人材の穴埋めをしたいときなど、いろいろな事情があって公開しない場合や、懇意にしている少数のエージェントだけに声をかける場合など、エージェントでなければ知りえない募集は非常に多いです。運がよければ、掘り出し物の案件を見つけてきてくれます。また自分が考えたこともなかったおもしろいポジションにめぐりあえるかもしれません。
会社の生情報を入手できる
特定の会社と強いコネクションがあるエージェントは、社内事情に精通しています。現在のビジネスの状況、人事、組織再編や人材補充計画などの情報を持っているので、なかなか入手できない貴重な情報を教えてくれます 。
私は情報をもっていそうなエージェントに会ったら、社内事情を根ほり葉ほりききます。これが次の会社を決めるうえで重要な情報になるし、面接対策にもなります。自分の行きたい会社と強いコネがあるエージェントにめぐり合うことも重要です。
企業との細かいやり取りを代行してくれる
採用プロセスは、応募資料の送付、着確認、 選考のステータス確認、面接の日時調整、 レファレンス、ジョブオファーの確認から契約締結に至るまで、多くのステップがあります。複数企業に応募していると、担当者とのやり取りはもっと複雑化します。コンタクト先を一人に絞ることができるとその手間は簡素化されます。他にどんな応募者が何人ぐらいいるのかという内部情報も教えてくれることもあります。
エージェントを使うリスク
エージェントの売上達成のためにあなたの転職が使われる
エージェントの目標は、クライアントの会社が探している人材を見つけてきて、入社してもらうことです。そのため、あなたが行きたい会社よりあなたが受かりそうな会社を勧めてくる場合が往々にしてあります。また、募集をかけてからしばらく経つのになかなか人材が集まらないポジションを無理に勧めたり、オファーを複数受けた場合に自分のクライアントの会社への入社を強力にプッシュしてきたりすることがあります。
自分の転職目標をしっかり持っていないと流されてしまい、当初の考えとは違う仕事をつかんでしまうというリスクもあります。エージェントはノルマをもったセールスマンでもあるということを理解しておきましょう。
エージェントの中で応募者どうしの競争がある
エージェントは、クライアントから人材募集の依頼を受けると、 自社データベース、自社メディア、ジョブサイトで応募をかけたり、直接人材にコンタクトしたりして、適当な人材を集めます。人材募集する企業は複数のエージェントを使うことが多いので、エージェント同士の競争になります。自社に少しでも有利になるように、集めた人材を選抜し、誰を応募させるか決める場合があります。ですからどんなに応募したくても、レジュメを会社に送ってくれない場合もあります。
エージェントの質はピンキリ
人材紹介ビジネスは参入障壁が低いためか、違う業界から転職してきて、あまり知識や経験がなかったり、適当な仕事をする人も少なからずいます。私も素人のコンサルタントに当たって苦い思いをしたこともたくさんあります。知識不足で、クライアントの会社が用意したジョブディスクリプションとレジュメのマッチング能力がなく、自分に合わない仕事を紹介されたことも。これはエージェントの会社の問題というより、コンサルタント個人の質に大きく左右されます。担当のコンサルタントはこちらから選ぶぐらいのつもりでいたほうがいいかもしれません。
まとめ
エージェントは日頃から就職市場をウォッチしています。業界や会社事情に詳しく、私たちの知らない情報をたくさん持っているので、利用しない手はありません。自分一人で就職活動するよりも、可能性を広げることができます。
ただし、エージェントのクライアントはあくまでも企業なので、あなたよりも企業のために動きます。 またエージェントはキャリアコンサルタントではないので、あなたがキャリア相談をしても、お金は払っていないあなたの親身になって相談に乗ってくれるとは限りません。 上手にエージェントを使うコツは、 エージェントの門をたたく前に、自分のキャリア目標と転職の目的を明確にしておくことです。
私は日本でも海外でも信頼できるコンサルタントが何人かいて、何もなくてもときどき連絡を取り合っていました。いいエージェントにめぐり合うのはなかなか大変ですが、いったんいい人にめぐりあうと長期間にわたってお付き合いができます。普段からいい関係を築いておくと、次に転職するときにすぐに探してくれたり、貴重な情報を教えてくれたりします。
エージェントを使うメリットとリスクを良く知り、上手なお付き合いをして転職の成功につなげてください。