海外や日本の外資系企業への転職を考えているあなた。転職活動中に実際どんなステップがあるのかご存知ですか?外資系の採用プロセスは日本企業のものと若干違います。最後にジョブオファーをもらうまでいくつものハードルがあります。どんなことが待っているのか、あらかじめ理解して準備しておくと、いざというときに慌てずにすむので解説します。
実際の採用プロセスは国、業界、会社によって様々だと思いますが、おおまかには以下の8つのプロセスになります。
- 告知
- 応募
- スクリーニング
- 面接
- 追加テスト
- レファレンス
- オファー
- 契約
そしてエージェントが入る場合は、このプロセスに採用企業とエージェントが複雑に絡んできます。それを表したのが下の図です。
最近は、採用プロセスがどんどん外注化、オンライン化される傾向にあります。図にあるように、最初から最後までオンラインやソフトウェアを利用することが可能になっており、従来型の人海戦術の採用プロセスがどんどん変わってきています。
日本と海外の様々な業界で数多くの転職をしてきた実体験をもとに、応募者の立場から実際のプロセスを順を追ってお伝えします。
1. 募集告知
採用企業は採用計画と予算(採用人員の年収)を決めると、ほしい人材のジョブディスクリプションを用意します。職務範囲、経験、スキル、学歴、仕事開始日などを非常に細かく書くので、時には何ページにもわたるドキュメントになります。エージェントがクライアント企業から要件をきいて書く場合もあります。
告知はオンラインのジョブボードは絶対に見逃すわけにはいきません。その他の会社のホームページ、エージェントのホームページ、LinkedInなどがあります。
プロフェッショナル採用ではエージェントを経由することが多いです。転職を決めたら、複数のエージェントに連絡を取るのがおすすめです。自分に合ったポジションの募集があったら知らせてもらえるよう、自分の現在の勤務状況、希望職種、契約形態、希望年収、仕事開始可能日などを伝えておきます。
自分のプロファイルを転職サイトやLinkedInなどに載せておけば、適任者を探しているエージェントや採用企業が連絡をくれることもあるので、積極的に自分を売り出すことも大切です。
転職活動の前に必ずやるべき5つのポイントで自分の希望職種をはっきりさせたら、ジョブディスクリプションを熟読して、応募すべきかどうか決めます。
2. 応募
応募する決心をしたら、ジョブディスクリプションに沿ってレジュメをカスタマイズします。レジュメは、そのポジションのジョブディスクリプションに書かれている要件を満たすように書く必要があります。
特に海外の場合は、魅力的なカバーレターを書くことも重要ポイントです。応募者が多くて競争率が高い場合は応募書類が全部読まれないことも多々あるので、自分がその仕事にぴったりな理由を延べ、レジュメを開けて読んでもらう必要があります。そのためにもカバーレターは周到に用意しなければなりません。
レジュメとカバーレターの他にも追加書類を求められる場合もあります。ですからきちんと書類を用意しようとすると、一社の応募には何日もかかることもあります。
応募書類の提出は、メールでエージェントや採用企業に送る場合や、ジョブボード、LinkedIn、企業の採用ページなどを利用する場合があります。最近は応募書類を紙に印刷することはまずありません。
3. スクリーニング
採用者側(企業の人事部、エージェント)は、集まった多くのレジュメを見てスクリーニングをします。これはショートリスティングとも呼ばれ、ジョブディスクリプションに合ったスキルをもっているかどうか、勤務地、移住者の場合は就労ビザの有無など、条件を満たしているかどうか確認して候補者を絞り込みます。
一つのポジションに何百通ものレジュメが集まることも珍しくないので、最近では自動レジュメスクリーニングツールがよく使われています。
スクリーニングは面談で行われることもあります。会社の人事部やエージェントと電話やカジュアル面談が行われます。採用側は、正式面接をする前に時間をかけずに人物チェックをする意図があるので、好印象を残すよう気を付けなければなりません。
4. 面接
候補者が絞られたらいよいよ面接です。最初はさらなるスクリーニングをして候補者をもっと絞り込みます。初期段階では主に人物をチェックすることに重きが置かれるので、人事部が出てくることが多いですが、エージェントが面接することもあります。
初期の面接では電話やビデオ会議システムが使われることもあります。最近はいい面接ソフトも出てきているので、面接が自動化されることも多くなっています。ソフトウェアが提示した質問に応募者がウェブカムの前で答え、ビデオが撮影されます。オンライン面接は、時間や場所を選ばないので便利ですが、相手が目の前にいないので、慣れないと苦労します。あなたがユーチューバーなら問題ないでしょうね。
一次面接またはスクリーニングの後は、いよいよハイヤリングマネージャ(上司になる人)による面接です。(最初からハイヤリングマネージャが出てくることもあります。)外資系では人事部に採用の決定権はなく、現場のマネージャに大きな意思決定権があります。
面接プロセスの中では、ハイヤリングマネージャとの面接が一番重要です。実際に一緒に仕事をすることになるマネージャと細かい経験、スキル、自分のキャリアプランなどをとことん話し合いましょう。マネージャとの相性も重要です。この面接が上手くいかなければ採用はなかったと思いましょう。
また他のマネージャや、一緒に仕事をすることになるチームメンバーと顔合わせすることもあります。特定の技術力が重要なポジションの場合、途中で技術面接が入る場合もあります。
最終面接は上級管理職になります。ここまでくれば募集職種の適任者とみなされたと考えていいでしょう。
5. 追加テスト
これはオプションで入る場合があります。例えば技術職の場合は、コーディングのテストやペーパーテストで技術力を判断したりします。
私は一週間などの期間が与えられ、ソフトウェアを使って課題の成果物を開発し、チームの前でプレゼンテーションをしたことが何度かありました。技術力とコミュニケーション能力をチェックしているのです。
適正検査が行われる場合もあります。私が経験したのは、テスト業者によるオンラインテストで、数学、計算能力、言語能力、クリティカルシンキング、性格テストなどがありました。何時間もかかるテストなのでしんどかったです。
6. レファレンス
外資系、特に海外ではレファレンスチェックをするのが一般的です。この目的は、応募者が申告した過去の雇用や職務経験などの裏を取ることです。虚偽の申告をする人もいますからね。
それと面接だけではわからない、第三者からみた人物像を把握する目的もあります。ですからあなたと一緒に働いたことがあり、あなたのことを良く知る人に頼んでおきます。通常過去の上司や同僚など二名ほどがレファレンス先として必要です。
採用企業やエージェントは指定されたレファレンス先に電話して、応募者のことをいろいろ質問します。最近ではこのプロセスも、採用専用ソフトを使ってオンラインで行うこともあります。ここまで来れば、レファレンス先からよほど悪い評価が出ない限り、ジョブオファーの用意があると見ていいでしょう。
過去の上司や同僚へのレファレンスに加え、興信所を使った身元調査が行われる場合もあります。私の例では、連邦政府が上顧客である企業に就職するときにありました。過去7年前までの雇用主までさかのぼって調べられたので、日本で働いていたときの会社も対象になりました。過去の犯罪歴や納税記録、家族親戚も調査されました。
7. オファー
身元照会が済むといよいよジョブオファーです!役職、給与、入社日などの書かれたオファーレターが届きます。多くの難関をくぐり抜けた先の大きなご褒美です。
でも喜んでばかりいられません。この段階での重要な仕事は給与交渉です。給与交渉は、面接の最終段階で金額が提示された場合に行うこともできるし、オファーレターに提示された額を元に行うこともできます。転職時は給与を上げるいいチャンスです。
8. 雇用契約
オファーレターには雇用契約書が同封されています。また社員規則や税金、年金などの追加ドキュメントが添付されている場合もあります。
雇用契約書は労働者の権利や義務、規則などが細かく書かれています。じっくり読んで内容を把握し、質問があれば人事部に問い合わせます。雇用契約では雇用主と被雇用者は対等ですから、契約内容が見合わない場合は変更が可能かどうか訊いてみることができます。条件が合わない、または他の会社からよい良いオファーを提示された場合は辞退になります。
契約書の署名は電子化への最後の砦で、長い間契約書を紙に印刷して手書き署名の形が主流でしたが、最近では電子署名も増えています。採用者にとっても応募者にとっても煩わしい手間がはぶけて便利です。
双方が合意に達した場合、契約書に署名すれば契約完了です。あとは仕事開始日を待つばかりですね。
採用プロセス各ステップの準備を始めよう
採用プロセスは実際に経験してみると、それぞれの段階でやるべきこと、注意すべきことがたくさんあります。転職活動のときは複数の会社に応募することが多いと思いますが、複数の会社やエージェントとスケジュール管理をしながらいろいろな課題をこなさなければならず、なかなか大変です。
でもそれぞれのプロセスで必要なことを理解し、あらかじめ備えておけば怖くありません。すべてのステップで最高の結果を出せるようがんばってくださいね!
この記事を読むと、就職活動の前にやるべきことがわかります