海外就職用の英語のレジュメは、日本の履歴書の書き方とぜんぜん違います。日本の雇用形態は日本独自のものなので、それが履歴書のフォーマットにも表れているんですね。だから日本の履歴書や職務経歴書をただ英訳しても、外資系の会社や海外の会社への就職には役に立ちません。
海外の採用は、雇用主が採用したいポジションの詳細であるジョブディスクリプションを作り、それに見合う人材を探して雇用契約をかわすことが目的。入社直後からその分野で力を発揮してくれる人を探すためのツールです。また応募者にとっては、自分を売り込むためのセールスツールです。
日本の履歴書の独自フォーマットは、終身雇用制を前提に作られた背景があります。スキルや経歴を細かく審査する背景が薄く、人物そのものや仕事に関係ないことまでチェックします。履歴書の使われ方がまったく違うのです。
外資系の会社や海外の会社を目指すなら、英文履歴書の使われ方や採用に関する考え方の違いを知り、書くべきことと書かなくてもいいことを理解しておきましょう。
日本と海外の履歴書の位置づけの決定的違い
スクリーニングツールとしての履歴書
採用企業にとって、履歴書の目的は応募者を選別することにつきます。採用したい人材のスペックはジョブディスクリプションで明確になっています。応募者がその条件に合っていなければ面接をする意味はありません。
仮に多くの応募者が条件にマッチしていたとしても、全ての応募者と面接するのは時間がかかり非効率です。だから合いそうもない応募者は振り落とし、絞り込んだ少数の人としか面接しません。 求職者はそれを踏まえてレジュメを作らなくてはなりません。
セールスツールとしての履歴書
一方求職者にとっては、履歴書は自分がジョブディスクリプションの条件に合っていることを証明するツールです。ただ過去の「履歴」を並べただけでは、新しい環境で力を発揮するかどうかはわかりません。その会社で一日目から力を発揮できることを証明しなくてはならないのです。
履歴書は自分を売り込むためのセールスツールでもあります。言ってみれば商品カタログですね。製品スペックを細かく書き、顧客の要求を満たすものであることを伝えます。 そして他社製品よりも優れていることをアピールしなくてはなりません。思わず手に取ってみたくなるような魅力的な見栄えも、商品カタログを作るうえでは必要なことです。
書くべきこと
エレベーターピッチ
商品カタログにはキャッチフレーズが必要です。強みや魅力、競争優位性を一言でアピールできるものです。 ビジネスではこれをエレベーターピッチと呼び、数十秒の限られた時間で自分や自社のプレゼンをすることです。
数百枚ものレジュメを見る忙しい採用担当者が最初に目にするのは、レジュメのトップにあるサマリー欄です。 この小さな欄で自分を売り込むことができなければ、その下の本文は見てもらえないことを覚悟しましょう。忙しい人事担当者は、すべてのレジュメを一枚一枚じっくり読むほど暇ではありません。
レジュメのサマリーは、面接やエージェントに会う時など、さまざまな機会にエレベーターピッチとして使える大切なキャッチフレーズです。 これは暗記しておくと、人に会った時にとっさに使えるので便利です。
そのポジションに関係あるスキルと経験
エレベーターピッチが読んでもらえたら、次の重要な情報はスキルと経験の詳細です。ジョブディスクリプションの内容を精査し、一つ一つの用件を網羅するように書いていきます。
ある要件は現職で、他の要件は過去のポジションで経験したかもしれません。これまでの経歴がすべての要件を満たすように書きます。なるべく最近の経験が要件を満たしていることが望ましいです。
スキルと経験の他に必要なのは、その仕事で何を達成したかです。困難な仕事をやり遂げて会社に利益をもたらしたことを、具体的な数字や記述を使って伝えます。応募先の会社で応用できそうな実績を書いておくと、採用者もその人が自社でどのように力を発揮してくれるか想像しやすいでしょう。細かい話は面接に呼ばれたときに存分に説明してください。
そのポジションに関係ある学歴と資格
海外の多くのプロフェッショナルの職種では、学歴も審査の対象です。といっても学校の名前はあまり関係がなく、何を勉強したかが重要です。大学での専攻や仕事関連の資格を具体的に書き、その仕事に関する知識と訓練が備わっていることを証明します。その職種に関係ない学歴でない限り、あまり意味はありません。
特に日本から海外に行って仕事を見つけるときは、学歴と資格をどう書くかは考えておくべきです。過去に勤めた日本の会社名などは海外の人にはわからないことが多いですから、応募者がきちんとした職業教育を受けているという証明があれば、採用者にとっては安心材料になります。
書かなくていいこと
そのポジションに関係ないスキルと経験
レジュメは、ジョブディスクリプションに合うスキルと経験があるかどうかをふるいにかけるための道具ですから、応募している仕事に関係ないことを書く必要はありません。これが応募するポジションに関係なくすべての経歴を書く日本の履歴書と違う点です。
途中で職種を変えた人は、そのポジションにあまり関係ない過去の実績をたくさん書かないように気をつけてください。また先にも書いたように、そのポジションに関係のない学歴は書いても意味がありません。
プライベートな情報
これまで見てきたように、海外における履歴書は、応募者が応募条件を満たしているかどうか見るための道具であり、応募者の売り込みツールであり、それ以上でも以下でもありません。だから、仕事に関係あること以外は書きません。
日本語履歴書のフォーマットには、仕事に関係ないことを書く欄がたくさんありますが、これは終身雇用制の名残でしょう。雇用主と非雇用者は仕事上の関係しかないのですから、プライベートな事など大きなお世話ですよね。これが日本の履歴書と海外の履歴書の大きな違いです。
特に最近は個人情報漏洩の懸念が高まっている背景もあり、求職者も採用に不必要なことを書くことは懸念します。最近では連絡先はE メールと電話番号だけで、住所は書かない人は多いです。ビジネスコミュニケーションが電子化されている時代、何かを郵送する機会はほとんどないので、住所は必要ないのです。
個人情報を書かない背景は、個人情報は差別を助長するという理由もあります。生年月日は年齢差別、性別は女性差別、国籍は人種差別につながります。写真貼り付けは、仕事の能力と関係ない外見や障害が採用に影響する可能性があります。多くの先進国では採用時の差別を禁止しているため、採用企業が年齢、性別、人種、婚姻、 家族の事を聞いたり、レジュメに写真を要求するのは違法になっています。
ですから、求職者が自ら進んで個人情報を積極的に公開する理由はまったくありません。もし仕事の能力と関係ない個人情報を要求された場合は、その理由を尋ねるべきです。
正しい英文レジュメの書き方を知って面接を獲得しよう
英文のレジュメは特に難しく考えることはなく、「仕事に関係あることをアピールし、仕事に関係ないことは書かない」という単純なものです。自分の商品カタログを作るつもりで、いかに魅力的に見せるか、会って話をきいてみたいと採用担当者に思われるかを念頭において作ってください。
履歴書は採用プロセスの8つのステップの中でも最初の大きな関門です。ここで好印象を与えて面接に呼んでもらえないことには、就職活動は始まりません。相手のほしい情報だけを効果的に書き、「詳しいことは面接で話すよ」と行間に含ませて、ぜひとも面接を獲得しましょう。