私は日本で文系学部を卒業して日本企業で普通の事務職をしていたのに、今ではITスペシャリストとしてオーストラリアの現地企業で働いています。なぜこんな劇的なキャリアチェンジができたかというと、海外の大学院に留学して専門知識を身につけたおかげなのです。
日本では大学院というと一般の人が気軽に行くイメージはありませんが、海外ではキャリアアップのために、また職種を変えて転職するために、会社をやめて進学したり、仕事をしながら学位を取る人は多く、私の同僚の多くも大学院に通っています。
私が日本の会社を辞めて留学したのは、アメリカの経営大学院(ビジネススクール)で、情報システムの専攻でした。入学前にITの素養はまったくありませんでしたが、ここで一年半集中して勉強し、卒業してすぐに外資系コンサルティング会社に就職することができました。どうしてそんなことが可能だったのかをお話しします。
キャリアアップを目的とした実践的なカリキュラム
日本の大学のコースは職業と直結していない場合が多いので、就きたい仕事と切り離して専攻を選ぶ人も多いですよね。だから学んだ内容は仕事とまったく関係ないことも多いです。私も日本での学部の専攻は仕事とまったく関係なく、教養を高めるために行ったようなものです。4年間という時間と授業料の費用対効果があったかといえば・・・疑問です。
海外では大学というのは、特定の仕事に役立つ専門知識を身につけにいくところ。就きたい仕事が決まっていて、その仕事に必要だから知識を得に行く人や、在学中にいろいろなクラスを受けながら将来の仕事を決める人もいます。
私が大学院で学んだ内容は、まさにITプロフェッショナルや管理職になるためのコース。ビジネスと情報システムを一から勉強し、専門的な内容まで幅広く勉強しました。IT技術だけでなく、企業が情報システムを導入するにあたっての重要なポイントや、ビジネスの中でのITの役割といったものをみっちり教えられました。
勉強の題材は実際に企業が直面する課題を扱ったケーススタディが使われることが多く、机上の空論とは程遠いものです。ここで学んだことは、その後私がIT分野に転職するにあたってなくてはならないスキルになり、その後長い年月が経った今でも私のキャリアの礎になっています。
みんなで一緒に学ぶグループプロジェクト
授業が勉強になったのはもちろんですが、クラス外のグループ活動も充実していました。多くのクラスでプロジェクトがあり、仲間と一緒に課題やリサーチをして協力してでペーパーを書いたり、プレゼンテーションを作ってクラスで発表したりといった活動が多かったです。授業の後や週末に集まってグループディスカッションをし、分担を決めて一緒に成果物を作っていきます。
一般企業のIT部門を訪問して管理職にインタビューをし、論文にまとめるというプロジェクトもありました。こういった実践的な内容は、ITの経験がゼロの私にとっては就職後の仕事の疑似体験をすることができ、ハードであると同時にとてもワクワクする時間でした。
大学院のクラスメイトはみんな社会人
海外では大学で基礎能力を身につけてから就職し、ある程度の職務経験を積んでから、さらにキャリアアップを狙うために大学院に行く人が多いです。また、私のようにまったく違う分野を一から学んでキャリアチェンジする人もいます。
私が学んだ大学院は9割ぐらいが社会人。みんな昼間の仕事を終えてから、夜学のクラスにやってくるのです。すでにIT分野の仕事をしていてITマネージャになりたい人、ITの経験はあまりないけどIT関係にキャリアチェンジしたい人。みんな自分の職場での経験をシェアししてくれて、経験がなく英語も苦手な私は仲間に頼ってばかりでしたが、とても刺激的な時間でした。
私はフルタイムの学生だったので、昼間は予習と復習に充て、夕食を食べてから毎日1コマから2コマの授業を取って、夜遅く大学寮に帰って寝るというハードな生活でした。実際これほどハードに勉強した経験は後にも先にもなかったと思います。でもフルタイムで仕事をしているクラスメイトたちは夜は大学に通い、週末には宿題やプロジェクトワークで終わってしまうのです。こんな勉強熱心な人たちは日本では見たことがなかったので、彼らには本当に感心していました。
民間出身の教授陣による実践的なクラス
日本の大学は民間企業との距離があり、大学でキャリアを積む教授は生涯大学で、民間に勤める人は生涯民間企業で働くのが普通ですよね。だから講義の内容は実践的な内容でないことも多く、学校で勉強したからといってそれがそのまま仕事に役立つとは限りません。
アメリカでは、大学と民間との交流が多く、民間出身の人が大学で教えたり、大学で教えてから民間に戻ったり、両方を掛け持ちする人も多くいました。だから今産業界の現場で起こっている話題をそのままクラスに持ってきてくれました。ときには現役の企業のマネージャをゲスト講師として連れてきてくれるときもありました。大学が常に現場のビジネスと繋がっているという環境はとても刺激的で、就業経験がなくても現場の雰囲気を知ることができました。
海外で初めて働いたインターンシップ
私はアメリカに行く前はプログラミングの経験がまったくなく、大学院で初めて学びました。クラスで覚えたことをさっそく使って、インターンシップ生としてアメリカの民間企業で働きました。
この企業のIT部長が私の大学の教授で、私はそのつてでインターンの仕事を得たのです。彼は一教授として、インターンが大学生の学び一環だということをよく理解していて、わからないことがあるといつも教えてくれました。まさに学校で習ったこと実践の場ですぐに使うことができ、願ってもないすばらしい体験でした。
このインターンシップの経験は大学院の単位になったので、学業をしながら就業経験を得てお金もかせぐことができました。貧乏学生で奨学金をもらっていた私には一石二鳥でした。この企業で経験したことは、後にオーストラリアの企業で働くときにも大いに役立ちました。
また初めて海外の会社で働く機会を得て、日本との違いに本当にびっくりしました。みんなそれぞれ自分の職務範囲が決まっていて、自分の仕事が終わったらさっさと帰る。日本で多いつき合い残業はなく、上司との関係も友達みたいで気楽でした。この経験がのちに海外で働くことに決めた大きなきっかけになったのです。
大卒なら海外大学院留学がキャリアチェンジにおすすめ
海外の大学や大学院は、仕事に必要な専門知識を得にいくところなので、実践的な知識を身につけたいなら海外に留学するのはおすすめです。でもすでに日本の大学を卒業していてさらに専門知識を学びたい人や、転職に必要な知識を身につけたい人は、大学に4年間行きなおすのは時間もお金もかかって現実的ではありません。大学院なら1ー2年で卒業することができ、奨学金を使えば授業用を免除してもらうこともできます。
私は思い切って日本の会社をやめて大学院に留学したおかげで、卒業後は外資系にコンサルタントとして就職することができました。大学院留学はお金がかかりますが、私は奨学金で授業料を半分払ってもらいました。(ローンではなく奨学金なのでもちろん返済はありません!)インターンシップや学内でのアルバイトでの稼ぎも足しになって、なんとか卒業までこぎつけることができました。卒業したときには貯金はすっからかんでしたが、外資系コンサルタントになったら転職したら給料が二倍になったので、すぐに元を取ることができました。
海外の大学院は、将来の仕事に直結するような専攻を選べば、特に外資系でのキャリアアップやキャリアチェンジに有利です。さらには海外転職や海外でビザを取るときにも有利になるので、キャリアの可能性を世界に広げることができます。あなたもぜひ海外留学を選択肢に入れてみてください。