あなたが日本で働いているITエンジニアだったら、またはITエンジニアを目指しているなら、これはぜひ読んでほしい記事です。
日本のIT業界の労働環境は過酷です。私が日本で働いていた時は、夜8時~10時ぐらいまでの残業が当たり前、締め切りに近いときは午前様もありました。ところが、オーストラリアで仕事を始めたとたんに5時にはピタリと帰る生活になり、自由な時間がたくさんできて、人生を心から楽しめるようになりました。
私が一緒に働く同僚は、世界中から来た移民ばかりです。でもこれまで数多くの会社で仕事をしたのに、日本人と会うことはほとんどありませんでした。 こんなに天国のような生活ができるのに、なぜ日本人は海外で働く道を選ばないのだろう? といつも残念に思っています。
なぜなら、 ITエンジニアは、キャリアアップの舞台を世界に広げる障壁が格段に低いからです。そして、日本のエンジニアが海外に拠点を移すと有利なことが山ほどあるのです。
ステータスが高い海外のITエンジニア
私は日本の外資系 IT 会社で働いていたので、 海外のさまざまな国の同僚と働く機会が多くありました。彼らと接する中で、海外の同僚は 日本の会社のシステムインテグレーターなどに比べると社会的に高いステータスがあると感じていました。
実際に自分がオーストラリアで働いてみると、世間の私を見る目が変わった事に気づきました。IT技術者というだけで、多くの人に尊敬の目で見られます。IT技術者は専門教育を受け、非常に特化した専門知識をもつ高度人材です。高い品質の成果物を出せる人材は、高水準の給料が狙える職種なのです。海外では、日本でいうところの「SE」という、なんでもやるような職種はありません。すべてのポジションには特定分野の専門能力が求められます。
多くの先進国では、情報技術は企業や政府の運営の根幹を占めます。ITがわからない経営者などお話になりません。IT戦略を経営戦略と位置づけ、多くの優秀な技術者を雇い、ITで経営革新していくことが必須になっています。だから企業のIT部門は、多くの技術者をかかえる花形部門なのです。
一方日本の企業の経営者の多くは高齢者、ITに疎い人がとても多いですね。なので外部のベンダーに丸投げして開発させます。海外ではシステム開発を他社へ丸投げすることはほとんどないでしょう。経営の根幹になるものを外部頼みにはできないのです。また外注していたのでは知識や経験が社内に蓄積せず、スピーディに変化に対応することが難しくなります。日本のIT化の遅れは、日本の経済が弱体化した原因の一つであることは間違いないでしょう。
こんな情況だからか、日本のITエンジニアは、海外でいうところの専門職とはいいがたいです。文系学部をでていても、技術の勉強をしたことがなくても、簡単にエンジニアになれてしまいます。キャリアパスも一つの専門分野を深く追求するというより、いろんなことを経験することが一般的です。企業のIT部門には技術者が少なく、どちらかというと外注先と社内の調整役です。エンジニアの仕事内容は多岐にわたり、本来のエンジニアとしての仕事以外の仕事も多かったりします。
専門性を補うべく、長時間労働が常態化しています。日本のITエンジニアはプロフェッショナルというより、価値を労働時間で測られ、低賃金で働かされる、いわゆる土方に近いのです。日本のIT業界から海外へ転職すると、その待遇の違いにびっくりすることは間違いありません。
ITエンジニアはキャリアアップがしやすい
多くの日本人は、海外で最初にてっとり早く稼ぐ方法として、最低賃金かそれに近い仕事に飛びつきます。つまり、和食レストランの店員、コールセンター、介護の仕事などです。しかし海外で安定した収入を得てある程度の生活レベルを維持するためには、プロフェッショナル(専門職)がだんぜんお勧めです。
非専門職はスキルや経験があまりなくてもできるので、とりあえず現地で仕事を見つけて最初のステップにするにはいいかもしれませんが、長期的展望でのキャリアにはお勧めしません。仕事にかけた労力が自分のスキルや経験になってキャリアアップに繋がりにくいのです。どうせ仕事に時間を費やすなら、やればやるだけ上のポジションに行けて給料も上がる仕事を選ぶことをお勧めします。
その点ITエンジニアなら、専門分野に特化したスキルと経験をつめばどんどんキャリアアップしていけます。海外では終身雇用制ではないので、自分で専門分野に特化したキャリアを定め、転職をしながら新しい技術や経験を身につけていきます。
私は日本にいたときは、ソフトウェアの技術営業職をしていました。海外転職の際は英語の壁があったので少し軸をずらし、日本で専門だったソフトウェアのコンサルタントとしてキャリアをスタートしました。最初は開発系の仕事が多かったのですが、私はどちらかというと顧客に接する仕事が好きなので、ビジネスアナリスト系の仕事を徐々に増やしていきました。また、最初はコンサルティング会社で仕事をしていましたが、現場で働いてみたかったので、徐々にユーザー側の会社で働くようになり、多くの業界で経験を積むことができました。
ソフトウェア業界は流行りすたりが早く、いまや日本にいたときに使っていたソフトの需要は少なくなってしまいました。時代に合わせて新しい技術を学んだり、新しい技術や経験を習得できる会社に転職しながら、基本の専門領域は変えずに、少しづつ守備範囲を変化させながらキャリアアップしてきました。
特にIT業界では、一つの会社に長くいるといろいろな技術や経験が積めないので、数年に一度転職する人が多いです。会社はあなたがやることを決めてくれません。あくまでも自分のキャリアプランを軸とし、自分のやりたいことをやらせてくれる会社を選んで転職するのです。
海外できちんとキャリアを積んでいれば、仮に日本に帰ったとしても就職には困らないでしょう。多くの国は日本より情報化、オンライン化がずっと進んでいます。私は日本を出てから10年以上たちますが、いまだに日本のエージェントから仕事のお誘いを受けます。
ITエンジニアは海外移住に有利
ITエンジニアは高度専門職です。ということは、企業側にとっては人材が獲得しにくいということ。これは海外移住者にとってうれしいことです。誰でも簡単にできる仕事なら海外の人材をわざわざ採用する必要はありません。誰でもできないから海外移住者に機会が回ってくるのです。
だからIT分野なら、多くの国で就労ビザが取りやすいのです。多くの移住希望者はまずビザで引っかかります。国家は自国の国民の雇用を守ることが先決なので、外国人はそう簡単に国内で働かせません。そして、就職には実際にその分野で働いた経験が重視されます。すでにIT分野で働いた経験を持つ人は、こんな有利なチケットを使わない手はないでしょう。
日本人が苦手な英語がそれほど流ちょうでなくても、仕事ができてしまうのもITのいいところ。私も海外に来てからは英語ではそうとうてこずりました。もしITでなかったら、他の専門職としてこれほど簡単に仕事がもらえたかは疑問です。
ITエンジニアなら海外をめざそう
あなたにITエンジニアとしての経験があるなら、他の職種と比べると海外転職のスタート地点でかなり先を行っています。世界で専門性が評価され、すばらしい環境で好待遇で働けるのに、日本の待遇と職場環境に甘んじているのは本当にもったいないです。
海外での転職に挑戦してみようと思ったら、英語力や移住先で必要とされるスキルをなど、自分に足りないスキルを追加して、ビザを得る手段を探し、海外で仕事を探してみてください。同じ仕事をしていても、場所を変えるだけでこんなに人生がガラッと変わってしまうのかと、びっくりすることになるかもしれません。