私は大学卒業後日本企業一社で働き、その後はずっと外資畑を歩きました。会社の国籍はアメリカ、カナダ、オーストラリア。外資では、そして特にIT業界では、どんどん会社を変わりながらキャリアアップするのは普通です。期限付き契約だったり、吸収合併などで会社が突然変わったり、自分の意志でなく会社を去らねばならないこともあります。
でも総合的に見て、私は外資の方が断然働きやすいし、長期的にみてキャリアアップに有利なのでおすすめです。その理由をご紹介します。
1. 自分が主役
外資は個人主義なので自分のやり方で仕事ができるのがいいところです。外資企業の日本オフィスだと飲み会などがありますが、それでも日本企業のように勤務時間外での活動が強制力を持つことは少なく、参加するかどうかは個人次第。
上司の権限はとても大きいけど、日本企業のような厳しい上下関係はなく、役割の違う同僚という感じで、あくまで対等です。 だから上司にやりたくないことを無理に押し付けられることはなく、自分の意見をはっきり言えます。
海外の職場でよく聞かれるのが、「日本の会社って、上司が帰るまで待ってなくちゃいけないんでしょ?」という質問。そうそう、日本だと上司が遅くまで残っているのに「お先に失礼しま~す!」とは言いにく、付き合い残業もありますよね。外資では自分の仕事の範囲がきっちり決まっているので、自分の仕事を早く終わらせたらさっさと帰ります。自分で自分の仕事をコントロールできるので余計なストレスが減ります。
2. 自分でキャリアをデザインできる
なぜ自分の仕事が終わったらさっさと帰れるかというと、それはポジション別採用だからです。会社はその時々にほしい人材の職務記述書(ジョブディスクリプション)とそれに必要なスキルリストを作ってそれに合った人材を採用するので、仕事の責任範囲がはっきりと労働契約書に書かれています。だから契約範囲外のことはやりません。
外資でのキャリア構築は、まず自分のやりたいことに合ったキャリアプランを作って、それに合う会社を見つけます。上司とその会社で何をするのかを話し合って、仕事内容について合意する。だからやりたくもない仕事をやるように言われたり、希望もしていないのに違う職種に配置換えをされるということはありません。仮にそういう事態が起こった時は上司に相談して仕事内容を変更するか、それで解決できない場合は転職します。転職でキャリアを作っていくのは普通のことなので、何度も転職しても白い目で見られることは日本企業ほどありません。
3. 勤務評価は成果で決まる
日本の会社で働いていた時、仕事がぜんぜんできない後輩の男性社員が私より高い給料をもらっていたり、仕事をせずぶらぶらしているおじさんが高い役職についていたりして、不思議でした。日本の会社は実力でなく、年齢や性別で給料が決まることが多いです。
外資系では仕事内容がジョブディスクリプションに書かれていて、その責任を遂行して成果を上げた人がそれに見合う給料がもらえるという実力主義。利益を上げるのが会社の使命ですから、理にかなったやりかたです。勤務評価基準もはっきりしています。年度の始めに上司と話し合って目標を決め、それを達成したかどうかが評価指標になります。
逆にいえば、仕事さえやっていればやり方は個人に任されます。慣習とか伝統よりも、成果をあげたかどうかがすべて。会社にもよりますが、いつ仕事をしようがどこでしようが、文句を言われません。自宅勤務もしやすく、柔軟性のある働き方ができます。
4. 性差別や年齢差別が少ない
日本企業には男性優位や年功序列がいまだに根強く残っています。キャリアアップしたい女性にとって、性別役割の意識がある日本の会社は非常に困難が多いです。まず応募のときから年齢や性別を履歴書に書かせられるので、なかなか面接までたどりつけません。年齢や性別という、自分では変えようもないことで、しかも仕事の能力とまったく関係ないところで判断されるのは悲しいことです。人材を仕事内容やスキルで評価する会社なら、そんな属性情報は必要がないのです。
外資系では仕事に関係ないことを履歴書に書くことはないし、多くの国ではそのような個人情報に言及するのは違法です。私は外資に移って初めてプロとして一人前に扱ってもらってとてもうれしかったです。女性が日本企業から外資に行くと、自分の目指す道をサポートしてくれる職場環境に居心地の良さを感じるでしょう。日本企業で行き詰まりを感じている女性はおすすめです。
5. グローバルスタンダードの働き方が身につく
日本の会社の雇用制度は世界から見れば特殊です。会社の命令によって転勤や配置転換が決まり、社内異動で様々なポストを経験します。会社をやめないという前提で、終身雇用制の慣習がいまだに残っています。このような働き方だと専門性を身に着けるのが困難で、他の会社で能力を発揮するのが難しくなります。社員の職務範囲をはっきりさせないのは、リモートワークを推進する足かせにもなっています。これからは日本企業も職種別採用が増えるでしょう。
日本固有の会社文化もあります。根回し、上下関係、建前重視、遅い決断、結果よりプロセス、効率性より前例重視・・・。日本では長時間働くことは良く評価されますが、日本の外では効率性、つまり早く終わらせることが重視されます。私は仕事がものすごく早い海外の上司や同僚たちと一緒に仕事をすることで、とても鍛えられました。
日本のビジネスが世界でどんどん競争力を落としており、グローバルビジネスの適応能力が求められるようになっている今、日本独自のやり方だけでしか仕事ができないのはリスクが大きいと思います。
6. グローバルコミュニケーション能力が身につく
私が日本で働いていたときは上司が日本と海外に二人いた時もあり、普段から世界中の同僚と仕事をしていました。年に数回北米、アジア、オセアニア、ヨーロッパなどへ海外出張に加え、海外との電話会議やネット会議は日常のことだったので、実践的な英語を鍛えることができました。
それに加えて、多文化、多人種の人たちと一緒に働くことで、グローバルなコミュニケーション能力を身につけられたのは大きなメリットでした。グローバルで通用するコミュニケーション能力は、日本のそれと大きく違います。自分の意見をはっきり言うこと、やってほしいことを具体的に言うこと、意思決定を早くすること、自分の成果を遠慮せずに言うことなど、日本の外資系で身に着けた能力は海外でも大いに役立っています。
7. 給与が高い
私は日本企業から外資系に移ったら給料がいきなり二倍になりました。自分は同じ人間で同じ日本にいるのに、不思議な感じでした。これは日本の会社が女性に低い給料を払っていたのもあるし、学歴を上げたのもあります。
そして外資への入社時に給与交渉したのも理由の一つ。他の会社からのオファーの方が高かったのでそのことを伝えたら、すぐに同じ額を提示されました。転職のときこそ年収を上げるチャンスなので、このチャンスは逃さないほうがいいです。きちんと給与交渉する能力があることは、仕事で必要な交渉能力があると判断されます。
外資系就職をめざそう
外資系のメリットを挙げてきましたが、一口に外資系といっても、海外本社の影響が色濃く反映され、高度な英語力が要求される会社から、日本にローカライズして日本企業とあまり変わらない会社まで様々です。ポジションによっても働き方は変わってきます。自分のスキルやキャリアパスに合わせ、自分に合った会社を選ぶこをお勧めします。
日本の会社は、海外から閉ざされた環境と日本語の壁の中で、滅私奉公、男性中心、実力よりコネ重視という日本独自の企業文化を築いてきました。世界はボーダーレスになり、このような古い価値観に縛られていたのでは会社も個人も持続するのは難しいでしょう。
外資系での経験は将来のリスクに備えることにもつながります。外資系で働いたことのない人は、ぜひ外資系就職を目指してみてください。厳しいけれど、いい収穫がたくさんあると思います。